【ロールモデル】理工学研究科 山﨑 鈴子 教授

好きな研究を続けながら後進を育てられる喜び

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山﨑 鈴子
Suzuko Yamazaki

大学院理工学研究科 教授


1983年 奈良女子大学理学部化学科卒業。1988年 奈良女子大学大学院 人間文化研究科 博士課程修了。学術博士。1988年〜1990年日本学術振興会 特別研究員。1990年広島大学総合科学部 非常勤講師。1991年〜アメリカ合衆国ウィスコンシン大学 博士研究員。1993年山口大学教養部 講師、1996年理学部 助教授、2004年理学部教授、2005年大学院理工学研究科(理学)教授。2014年女性研究者支援室長(学長特命補佐)に就任。

光触媒による環境浄化
 光触媒反応に関する基礎研究で博士号を取得後、ウィスコンシン大学では、工学部附属の研究所に所属し、環境汚染物質の分解・無害化を目的としたエネルギー省のプロジェクトに従事しました。プロジェクトリーダーとして、地質学者や技術者とチームを組み、研究室で反応装置を作製後、1年かけて反応条件を最適化し、汚染が進むサバナ川流域で大掛かりなフィールドテストを行いました。その結果、土壌から吸引された高濃度の有機塩素化合物の分解・除去に成功しました。アメリカでは、常に実績を求められる厳しい環境でしたが、非常に充実した研究者生活を送ることができました。また、子育てしている多くの女性研究者の姿を目の当たりにしました。学位取得後の若い時期に、基礎研究と応用研究の両方を経験できたこと、子育てしながら活躍する女性研究者の姿を間近に見たことが、その後の私の人生に大きく影響したと思います。
現在は、理学部において、環境問題やエネルギー問題の解決に寄与する光機能性材料の開発を目的に、光触媒反応、色素増感型太陽電池、フォトクロミズムなどを研究テーマとして、基礎研究から応用研究まで幅広く行っています。

化学の魅力
 とにかく化学が好きだったので、研究者の道を選びました。化学は、自然界の様々な現象や暮らしの中に存在する物質を研究対象とします。実験を100個行って一つ解明されるかどうかという非常に根気の要る世界ですが、まだ解明されていない部分を、一つひとつ自分の手で明らかにしていくことに魅力を感じています。これまで解明されていることに対しても、それが真実であると先入観をもって研究してはいけません。まだ分からないことがたくさんあるはずです。予測に反したデータが得られたときにこそ研究の面白みがあります。そうした研究の面白さを学生や大学院生の皆さんに伝えていきたいと思っています。

仕事と育児に追われた日々
yamazakiforweb2.jpg 教養部講師として着任1年後に妊娠し、出産予定日の3週間前まで働き、産後3カ月半で復帰しました。同僚の先生方の理解と協力には今でも深く感謝しています。研究業績が途切れることが最も嫌なことでしたので、休暇中は家から大学の計算機を使って理論計算を行い、産休前に取得した実験データとまとめてアメリカ化学会の雑誌に論文を掲載しました。妊娠がわかったときから、計算化学を専門とする同僚の協力を得られたことが、研究を続けられた一番の理由です。復帰後は、毎日子どもを保育園に預けてから出勤する生活で、特に子どもが小さい頃は、病院にもしばしば通いました。当時の保育園は17時まででしたので、保母の経験をお持ちの方を雇って、保育園へ迎えに行っていただき、19時まで預かってもらいました。子どもが風邪をこじらせて1カ月間入院したことを契機に、出産前と同じペースで仕事をしてはいけないということを痛感し、働き方や時間の使い方を見直しました。

 一日は24時間しかありません。やるべきことも減らせません。でも、子どもや私が病気になってしまっては、すべてのバランスが崩れてしまいます。結局、研究論文を書く時間を削るしかありませんでした。子どもが就学してお弁当が必要になると、朝6時に起きることが日課となり、寝る時間を意識するようになりました。振り返ってみると、いつも時間と戦っていましたが、仕事と育児を両立することで、優先順位の付け方や時間の使い方がうまくなったと思います。そして、大きかったのは両親の助けでした。親を自分の生活に巻き込んで、必死に乗り切った子育てでした。子育て中は、1年間に発表する論文数は減らさざるを得ませんでしたが、論文発表のない年はありません。

 研究が続けられるように常にバックアップしてくれている主人にはとても感謝しています。同業者ということもあり、お互いの仕事を理解しています。主人が私のメンターといえますね。仕事を続けるためにはこうしたパートナーの理解が必要だと思います。私たちの時代は、子育てしながら研究を継続できている女性は少ないですが、これからはどのような選択肢を選んでも良いという多様性を受け入れる社会の実現が必要だと思います。

好きな英語で気分転換
 学生の頃から、化学の次に好きだったのが、英語です。将来は海外で働きたいという思いもあり、学生時代から熱心に英語を学びました。大学院生時代は、週一回のペースで英会話学校に通っていました。今でも英語は好きですね。気分転換に映画やテレビドラマ、音楽などで英語に触れる機会を持つようにしています。

教育者としての生きがい
 専門分野の知識はもちろんのこと、社会の流れを把握しておかなければ、教育者として学生の皆さんに伝えることができません。そうした思いから、人との出会いを大切にしています。たくさんの人に出会い、さまざまな考え方を吸収して、学生へフィードバックする。常に「学生を育てている」という意識を持つように心掛けています。
 

2014年9月20日